2018年に公開され、大胆かつ丁寧、繊細なセックスシーンが描かれたことで話題を集めた映画『娼年』。
ひとりの人間の成長物語であり、多様な性的嗜好がこの世に存在していること、女性が性欲を満たしたいと思うのは当然であること。
『娼年』はそんな「性のあたりまえ」を真摯に伝えてくれる作品だった。
元記事
DRESS
https://p-dress.jp/articles/8005
「「私がおしっこする瞬間を見てほしい」 映画『娼年』が描く性的嗜好の多様性」
本文抜粋
原作小説は『娼年』(石田衣良、集英社、2001年)。
男性に体を売る女性が「娼婦」だから、女性に体を売る若い男性は「娼年」。
文字通り、女性に対してサービスをする男性が主人公の作品だ。
■女性がおしっこする瞬間を見届ける
ひとつとして同じセックスはない。
人それぞれ性的嗜好が異なるから、すべてのセックスには個性がある。
リョウはそれらを肯定も否定もすることなく、ただフラットに受け入れて、女性たちと向き合ってきた。
「放尿する瞬間を見られることでエクスタシーを感じる」という女性とも真摯にコミュニケーションを交わす。
彼女はリョウに勇気を出して打ち明けた。
私がおしっこをするところを見ていてほしい、と。
過去に付き合った男性に頼むと大抵引かれ、気持ち悪がられてきた。
「リョウくんも引くかもしれない」という彼女の不安を打ち消すように、リョウは「見せてください」と言う。
居間に立ったまま、彼女はリョウの前で勢いよく放尿し始める。
リョウはそれをただただ見つめ、彼女がすべてを出し切ったあと、近くに寄って頭をそっと撫でた。
笑顔で。
ギョッとしたり、「おしっこ? 何言ってんの?」と否定したり、バカにしたりするシーンかもしれないけれど、リョウは最後の最後まで見届けた。
自身の性的嗜好を雑に扱われたり、踏みにじられたりして、かつて傷ついたことのある女性が見ると、心が癒やされるシーンなのではないかと思う。
■多様な性的嗜好
『娼年』はリョウというひとりの若い男性の成長物語であり、多様な性的嗜好がこの世に存在していること、女性が性欲を満たしたいと思うのは当然であること――
そんな見過ごされてきた、スルーされがちな「性のあたりまえ」を伝えてくれる作品だ。
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